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Welfare Rights Movement/福祉権運動



■年表

1955年1月 アウゼンハウアー、一般教書、青少年非行対策として500万ドルの連邦補助事業を提案。

様々な対立・揉み合い
   ↓
  新たなアプローチ:コロンビア大学のL・オーリンとR・クロウォードの「機会理論」(Cloward, Richard A. and Lloyd E. Ohlin, 1960, Delinquency and Opportunity. )〜ニューヨーク・マンハッタンのローアーイーストサイドに、地元のセツルメント・ハウスの協力の下に、「青年動員隊(Mobilization for Youth: MFY)」を創設。全国精神衛生研究所の寄付を得る。
   ↓
  1962年 コロンビア大学グループの指導のもとにMFY:ローアーイーストサイドをモデル地区としてコミュニティ再編活動を開始。「PCJD、フォード財団、労働省、ニューヨーク市からも財政援助を受け、黒人、プレルトリカンを主とするスラムの青年に対する多面的な機会開発の事業に乗り出」す。

1960年5月 J・F・ケネディ D・ハケットを委員長とする「青少年非行および青年犯罪に関する大統領委員会(The President's Committee on Juvenile Delinquency and Youth Crimes: PCJD)」を任命。

  1960年代初め フォード財団「コミュニティ改善事業(Community Development Program)」=「灰色地域計画(Gray Area Project)」P・N・イルヴィセイカー担当〜「地元リーダー(indigenousleader)」の活用、関連市機関と民間福祉機関を傘下に収めるCPI(Community Progress, Incorporated)の創設 → 貧困撲滅戦争における「コミュニティ活動機関(Community Action Agency)」のモデルに。

1963年 ワシントン大行進:「今すぐ自由を」「今すぐ仕事を」
1963年2月2日 ケネディ:CEA委員長W・ヘラーに対貧困事業の立法準備を指示
1963年6月 ヘラー:作業班を作り立法の準備を開始
1963年11月 作業班:関係省庁に覚書を送付し提案を求める
     →作業班:各省庁から返送された提案を検討
1963年11月22日 ケネディ:対貧困事業を立法勧告に含める決定を下す → テキサス州ダラスで遊説中に暗殺

  1964年1月 教科書不足事件(プエルトリカンの母親の抗議VS小学校長会の非難)→ 『デイリー・ニューズ』のMFY攻撃により拡大 → 市補助金の凍結、MFY事務局長の辞任 ⇒ 苦境に立ったMFYは政治的支持を公民権運動団体に求める。

  1964年 MFYのワーカーの何人か援助のもとで福祉受給者同盟(Welfare Recipients' League)結成
  1965年 MFYと同盟は、クロワードとピヴェンの支援のもと、ニューヨークにおいて市全域の福祉権組織を結成

1966年 「貧困および諸権利に関する活動センター」の設置@ワシントン
1967年 「全米福祉権組織」の結成
主張(古川 2000)
@健康で人間らしい体面を保てる水準までの扶助基準の引き上げ
A資力調査活動の縮小
B家族単位原則の撤廃
Cプライバシー侵害にたいする反対
D追加的所得を理由とした扶助削減反対
E法的諸権利の尊重
★WINプログラムへの批判



■[メモ]

MFYの事業の主力:青少年の自助的な教育・訓練活動
⇔予算的には一割にも満たなかった青少年の「社会行動」を支援する事業〜「コミュニティ組織部(Community Organization Unit)」と「法律扶助(Legal Service Unit)」の二部門を拠点としてコミュニティ活動担当者たち(Community Action Workers)が事業を推進。

「かれらは、スラムの青年たちを「社会クラブ」に組織するとともに、地域に関するあらゆる問題について相談に応じ、助言を与えた。「社会クラブ」が掲げた主要な戦術目標は、(一)コミュニティ改善の公共投資を拡充させること、(二)住民が自分の生活に影響を及ぼす諸制度の運営に発言権を獲得すること、(三)福祉サーヴィスの受給者にその給付・規制・停止において適法手続上の権利を保障することであった。このような目標の下に、青年たちは、コミュニティ活動担当者の支援をえて、スラムの家主に対する家賃不払運動、受給可能な各種の福祉サーヴィスに関する情報提供、警官の蛮行に対する抗議、福祉受給者の権利擁護のための福祉事務所へのデモ、一部地下鉄運賃の無料化要求、選挙権登録運動、「ワシントン大行進」への参加、公立学校における登校拒否運動など多彩な住民運動を展開した。これらの「社会行動」は、青少年を含む貧困地域の住民をその無力感から脱却させ、生活改善のための制度改革の運動に立ちあがらせて貧困住民の>>274>>なかに政治運動の基礎となる組織力と指導層を形成する契機を内包していた。その究極目標は「コミュニティ自治(Community Control)」の確立であった。」(大森1974: 274-5)



■英語文献表

◆Weinberger, Paul E. ed., 1969, Perspectives on Social Welfare: An Introductory Anthology, New York: The Macmillan Company. (=1973,小松源助監訳『社会福祉の展望(上巻)』ミネルヴァ書房.)
◆Piven, Frances Fox and Richard A. Cloward, 1971, Regulating the Poor: The Functions of Public Welfare, New York: Pantheon Books. a division of Random House
◆Weinberger, Paul E ed., 1974, Perspectives on Social Welfare: An Introductory Anthology, 2nd ed., New York: The Macmillan Company. (=1978,小松源助監訳『現代アメリカの社会福祉論』ミネルヴァ書房.)
◆Jackson, Larry R. and William A. Johnson, 1974, Protest by The Poor: The Welfare Rights Movement in New York City, Lexington: Lexington Books.
◆Sheehan, Susan, 1977, A Welfare Mother, New York: New American Library. with an introduction by Michael Harrington
◆Piven, Frances Fox and Richard A. Cloward, 1979, Poor People's Movements: Why They Succeed, How They Fai, New York: Vintage Books.
◆West, Guida, 198106, The National Welfare Rights Movement: The Social Protest of Poor Women, New York: Praeger.
◆Trattner, Walter I. ed., 1983, Social Welfare or Social Control?: Some Historical Reflections on Regulating the Poor, Knoxville : University of Tennessee Press.
◆Davis, Martha F., 1993, Brutal Need: Lawyers and the Welfare Rights Movement, 1960-1973, New Haven: Yale University Press.
◆Abramovitz, Mimi, 1996, Under Attack, Fighting Back: Women and Welfare in the United States, New York: Monthly Review Press.
◆Schram, Sanford F., 2002, Praxis for the Poor: Piven and Cloward and the Future of Social Science in Social Welfare, New York and London: New York University Press.
◆Nadasen, Premilla, 2005, Welfare Warriors: The Welfare Rights Movement in the United States, New York and Oxon: Routledge.



■邦語文献表

◆大森弥,19740330,「現代行政における「住民参加」の展開」渓内謙ほか編『現代行政と官僚制』(上)東京大学出版会,267-325.
◆定藤丈弘,19780401,「アメリカにおける福祉権運動の動向(II)――IV 公的扶助政策に対するインパクト(その1)」『社會問題研究』28(3・4), 55-78.
http://repository.osakafu-u.ac.jp/dspace/bitstream/10466/7280/1/2009000504.pdf
◆今岡健一郎,19811130,「アメリカにおける社会福祉の展開」一番ヶ瀬康子・高島進編『講座 社会福祉2 社会福祉の歴史』有斐閣, p191-246.
◆秋元 美世,199109,「アメリカにおける福祉受給権と福祉裁判の動向――資格論とマネ-ジリアル・フォ-マリズム」『季刊社会保障研究』27(2): 190-9.
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/sh270207.pdf
◆橋本宏子,199111,『住民参加と法――アメリカにおける福祉サービスと行政手続き』日本評論社.
◆古川孝順,20000228,「アメリカの社会福祉 第1部:社会福祉の背景」仲村優一・一番々瀬康子編集代表/窪田暁子・古川孝順・岡本民夫編『世界の社会福祉9 アメリカ・カナダ』旬報社, 25-67.
◆右田紀久恵・高澤武司・古川孝順編,20011215,『社会福祉の歴史――政策と運動の展開(新版)』(有斐閣選書)有斐閣.16+462p (初版:19770930)
・古川孝順「はしがき」i-ii.
・序 古川孝順「社会福祉政策の形成と展開――史的分析の視点と方法」1-23.
I イギリスの社会福祉
・1 古川孝順「重商主義の貧民政策――エリザベス救貧法から労役場テスト法まで」26-44.
・2 社本修「新救貧法における経済的自由主義の勝利――イギリスの新救貧法」45-61.
・3 阿部實「帝国主義と自由=社会改良――救貧法体制の解体」62-79.
・4 右田紀久恵「福祉国家イギリスの理想と現実――福祉国家体制」80-98.
・5 右田紀久恵「経済危機・シーボーム改革」99-103.
II アメリカ合衆国の社会福祉
・6 古川孝順「自助・貧窮・個人責任の論理――アメリカの救貧法」106-25.
・7 小松源助「ソーシャル・ワークの成立――リッチモンドの貢献」126-67.
・8 古川孝順「ニューディールの救済政策――一九三五年社会保障法」168-89.
・9 冷水豊・定藤丈弘「貧困戦争の破綻と福祉権運動――もう一つのアメリカ合衆国」190-207.
III 戦後日本の社会事業
・10 宇都栄子「恤救規則の成立と意義――恤救規則」210-22.
・11 土井洋一「救済の抑制と国民の感化――感化救済事業」223-37.
・12 吉田恭爾「階級対立の激化と「社会連帯」の擬制――社会事業」238-56.
・13 田多英範「昭和恐慌と社会事業立法――救護法の成立」257-74.
・14 高澤武司「翼賛体制と社会事業の軍事的再編成――戦時厚生事業」275-92.
IV 戦後日本の社会福祉
・15 高澤武司「敗戦と戦後社会福祉の成立――占領下の社会福祉事業」294-312.
・16 横山和彦「社会福祉と皆保険体制――医療問題を中心に」313-29.
・17 山口幸男「高度成長と社会福祉――児童問題を中心に」330-44.
・18 横山和彦「高度成長の破綻と社会福祉――ライフ・サイクルと所得保障」345-64.
・19 右田紀久恵「サッチャー政権誕生から二十世紀末へ」365-99.
・20 古川孝順「社会福祉基礎構造改革」400-53.
◆秋元美世,200701,『福祉政策と権利保障――社会福祉学と法律学との接点』法律文化社.
◆山森亮,20070916,「「生きていることは労働だ」――運動の中のベーシック・インカムと「青い芝」」障害学会第4回大会シンポジウム「障害と分配的正義――ベーシックインカムは答になるか?」(20070916)報告原稿
http://www.arsvi.com/2000/0709yt.htm



*作成:小林勇人
UP:20070718 REV:0804,13, 1024, 20080110... REUP:20100812,0916
 
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