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プロジェクトスタディIA (5B)

http://online-kaikou.ritsumei.ac.jp/2011/syp/show.php?course_code=13263
立命館大学産業社会学部

小林勇人

プロジェクトスタディIA (5D)  前期・火5・以学館27

■授業の概要 / Course Outline

 近年の日本社会の状態は、「貧困」の広がりが誰にでも見える時代になったと言って過言でない。年収200万円以下の労働者が1000万人を 越えたという。「ワーキングプア」のことだ。がそればかりか「違法ハケン」「ピンハネ」「偽装請け負い」が蔓延し、正社員は「カローシ(過労死)」の淵に立たされている。都市のホームレスは「ネットカフェ難民」や「河川敷生活者」に広がっている。一方、困窮しても生活保護の申請をさせてもらえなかった男性が、「おにぎり食べたい」と書き残し餓死していた。90歳のお母さんと介護していた60歳代の娘さんが2人とも亡くなって発見された事件や介護殺人など悲惨な事件もあとを絶たない。「新しい貧困」の一つとして人々の孤立や社会的排除も問題となっている。
 ところで、受講生の皆さんが「あなたは今豊かですか?それとも貧しいですか?」と問われたとしたら、答えに窮するだろう。簡単な例をあげれば、「アルバイ トを沢山しているのでお金は困っていないが時間がない」場合、自由なお金は「豊か」だが自由な時間は「貧しい」ことになる。下宿している学生の住居は豊か であろうか?「三間(時間・空間・仲間)の喪失」ということばがあるが「豊かさ」がモノだけでは測れないよい例である。「貧困」は人ごとではないということでもある。
 さて、先に示した人々の「貧困」は個人責任に帰すべきであろうか?貧困の中には、明らかに人為的に作られものも多いが、中には一見個人責任のように見えても、社会的要因を少なからずもっているものもある。ではなぜ個人責任のように見えるのか、それは生活問題の多くは「私生活」の困難として現われからであ る。しかし社会福祉の立場から、生活問題を解決または緩和するためには、社会や地域全体への対応と個人や家庭に対する個別的支援の両方が必要となる。例えて言うならば「森を見る」と「木を見る」の違い、「鳥の眼で見る」と「虫の眼で見る」の違いである。
 貧困を考えると暗い気持ちになってしまうが、暗い事ばかりもでない。世論の力が、薬害C型肝炎訴訟の終結を後押しする、生活保護母子加算廃止の復活、障害者自立支援法の応益負担廃止(新政権表明)などの、権利を保障していく動きもある。このことは、私たちが主体者として問題を解決・緩和できる可能性を示している。その基本は福祉社会のシステムを人間の力で再構築していくという実践である。人々が「生きていて良かった」と言える社会は、家庭・諸組織・地域・ 社会全体において、人々の協同と社会福祉制度を再生し持続させる実践によって実現される。
 本プロジェクトスタディはこうした展望を、「真の豊かさ」の理解に求めテキストを選択した。テキストの精読と討議、レポート作成により「アカデミックリー ディング」「アカデミックライティング」の基礎を修得する。

■到達目標 / Attainment Objectives

@「福祉社会」に関わる現実の理解及び基本的な知識と考え方の修得
A文献・資料を的確に理解し、それを正確に表現し伝える能力の形成

■授業回数・予定日

第1回  4月12日(火) 「分野T」の概要、目標、進め方/「豊かさ」の考え方
第2回  4月19日(火) 第1章「切り裂かれる労働と生活の世界」(〜p25の小見出しの前まで)
第3回  4月26日(火) 第1章「切り裂かれる労働と生活の世界」
第4回  5月10日(火) 第2章「不安な社会に生きる子供たち」
第5回  5月17日(火) 第3章「なぜ助け合うのか」
第6回  5月24日(火) 討議の中間まとめとアカデミックライティング演習・指導
第7回  5月31日(火) 第4章「NGOの活動と若者達」
第8回  6月07日(火) 第5章「支え合う人間の歴史と理論」終章「希望を拓く」(〜p204の小見出しの前まで)
第9回  6月14日(火) 第5章「支え合う人間の歴史と理論」終章「希望を拓く」
第10回 6月18日(土) 討議のまとめとアカデミックライティング演習・指導
第11回 6月21日(火) 同上
第12回 6月28日(火) 同上
第13回 7月05日(火) 同上
第14回 7月12日(火) 同上
第15回 7月19日(火) まとめと振り返り

■課題

(1)テキストの各章の小レポート(1000字) → 第2回〜5回、第7回〜9回に提出
(2)最終レポート(4000字) 「豊かさの条件――******」

■成績評価方法

・日常的な授業における取組状況の評価(50%)
・最終レポート(50%)

■教科書

◆暉峻 淑子 20030520 『豊かさの条件』, 岩波新書.

■参考書

◆広井 良典 20060710  『持続可能な福祉社会――「もうひとつの日本」の 構想』,ちくま新書.
◆広井 良典 20010620  『定常型社会――新しい「豊かさ」の構想』, 岩波新書.




■授業スケジュール後半の(ライティング演習・指導のための)課題

第11回 6月21日(火) 小レポート(1000字:うち500字以上は教科書のまとめ)
第12回 6月28日(火) 小レポート(2000字)
第13回 7月05日(火) 小レポート(3000字)
第14回 7月12日(火) 小レポート(4000字)
第15回 7月19日(火) 小レポート修正版(4000字) + まとめと振り返り


■レポートの書き方

★論文には「型」がある
0タイトル・著者名・著者の所属機関
1アブストラクト
2本体
3まとめ
4注、引用・参考文献一覧

・論文で一番やってはいけないことは? → 剽窃


■最終課題(最終レポート)

・タイトル:「豊かさの条件――******」(副題は自由に)
・字数:4000字以上(〜5000字未満)
・提出期限:7月24日(日)
・提出方法:小林までメールで提出


★レポートを書くために

戸田山和久2002『論文の教室――レポートから卒論まで』日本放送出版協会



UP: 20110620
小林:非常勤講師等 

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