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プロジェクトスタディIA (5C)

http://online-kaikou.ritsumei.ac.jp/2012/syp/show.php?course_code=13612
立命館大学産業社会学部

小林勇人

プロジェクトスタディIA (5C)  前期・火5・以学館35


補講のお知らせ:7月7日(土)2限、以学館35号


■授業の概要 / Course Outline

 本科目はプロジェクトスタディ分野「福祉社会」である。プロジェクトスタディは、基礎演習での学びをふまえて、“専門性”と“学際性”とを深め立体的な学びを展開していくための基礎的な能力を養成することをねらいとした科目である。このため、それぞれの専門分野における基礎的な文献・資料を批判的に読解し、論理と根拠をもって主張を表現することに取り組む。
 近年の日本社会の状態は、「貧困」の広がりが誰にでも見える時代になったと言って過言でない。年収200万円以下の労働者が1000万人を越えたという。「ワーキングプア」のことだ。そればかりか「違法ハケン」「ピンハネ」「偽装請け負い」が蔓延し、正社員は「カローシ(過労死)」の淵に立たされている。都市のホームレスは「ネットカフェ難民」や「河川敷生活者」に広がっている。一方、困窮しても生活保護の申請をさせてもらえなかった男性が、「おにぎり食べたい」と書き残し餓死していた。90歳のお母さんと介護していた60歳代の娘さんが2人とも亡くなって発見された事件や介護殺人など悲惨な事件もあとを絶たない。「新しい貧困」の一つとして人々の孤立や社会的排除も問題となっている。
 ところで、受講生の皆さんが「あなたは今豊かですか?それとも貧しいですか?」と問われたとしたら、答えに窮するだろう。簡単な例をあげれば、「アルバイトを沢山しているのでお金は困っていないが時間がない」場合、自由なお金は「豊か」だが自由な時間は「貧しい」ことになる。下宿している学生の住居は豊かであろうか?「三間(時間・空間・仲間)の喪失」ということばがあるが「豊かさ」がモノだけでは測れないよい例である。「貧困」は人ごとではないということでもある。
 さて、先に示した人々の「貧困」は個人責任に帰すべきであろうか?貧困の中には、明らかに人為的に作られものも多いが、中には一見個人責任のように見えても、社会的要因を少なからずもっているものもある。ではなぜ個人責任のように見えるのか、それは生活問題の多くは「私生活」の困難として現われからである。しかし社会福祉の立場から、生活問題を解決または緩和するためには、社会や地域全体への対応と個人や家庭に対する個別的支援の両方が必要となる。例えて言うならば「森を見る」と「木を見る」の違い、「鳥の眼で見る」と「虫の眼で見る」の違いである。
 貧困を考えると暗い気持ちになってしまうが、暗い事ばかりもでない。世論の力が、薬害C型肝炎訴訟の終結を後押しする、生活保護母子加算廃止の復活、障害者自立支援法の応益負担廃止(新政権表明)などの、権利を保障していく動きもある。このことは、私たちが主体者として問題を解決・緩和できる可能性を示している。その基本は福祉社会のシステムを人間の力で再構築していくという実践である。人々が「生きていて良かった」と言える社会は、家庭・諸組織・地域・ 社会全体において、人々の協同と社会福祉制度を再生し持続させる実践によって実現される。
 本プロジェクトスタディはこうした展望を、「真の豊かさ」の理解に求めテキストを選択した。テキストの精読と討議、レポート作成により「アカデミックリーディング」「アカデミックライティング」の基礎を修得する。

■到達目標 / Attainment Objectives

@「福祉社会」に関わる現実の理解及び基本的な知識と考え方の修得
A文献・資料を的確に理解し、それを正確に表現し伝える能力の形成

■授業回数・予定日

第1回  4月10日(火) オリエンテーション:産業社会学部人間福祉専攻の概要、目標、進め方

第2回  4月17日(火) 教科書 はじめに「生活保障とはなにか」
第3回  4月24日(火) 教科書 第1章「断層の拡がり、連帯の困難」
第4回  5月01日(火) 教科書 第2章「日本型生活保障とその解体」

第5回  5月08日(火) 討議の中間まとめとアカデミックライティング演習・指導

第6回  5月15日(火) 教科書 第3章「スウェーデン型生活保障のゆくえ」
第7回  5月22日(火) 教科書 第4章「新しい生活保障とアクティベーション」

第8回  5月29日(火) 討議の中間まとめとアカデミックライティング演習・指導

第9回  6月05日(火) 教科書 第5章 「排除しない社会のかたち」
第10回 6月12日(土) 教科書 おわりに「排除しない社会へ」

     6月19日(火) → 休講

第11回 6月26日(火) 討議の中間まとめとアカデミックライティング演習・指導
第12回 7月03日(火) 最終レポート第一次締切

第13回 7月07日(土)(2限、以学館35) 補講

第14回 7月10日(火) 討議の中間まとめとアカデミックライティング演習・指導
第15回 7月17日(火) まとめと振り返り

■課題

(1)テキストの各章の小レポート(1000字) → 第2回〜4回、第6・7回、第9・10回に提出
(2)最終レポート(4000字程度)「雇用と福祉――******」 → 第一次締切:7月3日(第12回講義時に紙媒体で提出) → 最終締切:7月15日(メールで提出)

■成績評価方法

・日常的な授業における取組状況の評価(50%)
・最終レポート(50%)

■教科書

宮本 太郎 20091120 『生活保障――排除しない社会へ』, 岩波書店.

■参考書

◆暉峻 淑子 20030520 『豊かさの条件』,岩波新書.
◆広井 良典 20060710  『持続可能な福祉社会――「もうひとつの日本」の 構想』,ちくま新書.



■レポートの書き方

★論文には「型」がある
0タイトル・著者名・著者の所属機関
1アブストラクト
2本体
3まとめ
4注、引用・参考文献一覧

・論文で一番やってはいけないことは? → 


★レポートを書くために

戸田山和久2002『論文の教室――レポートから卒論まで』日本放送出版協会



UP: 20120409, 0621, 22
小林:非常勤講師等 

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